高専生にTOEICは必要?57校中44校が単位に使う実態と目標点
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「高専って、英語はあまりやらないんでしょう?」
正直に言うと、受験のときの私はそう思っていました。理系の学校だから、数学と物理と専門科目——英語は片手間なんだろう、と。
まったく逆でした。
娘が入学して驚いたのは、TOEICの存在感です。学校ぐるみで受ける。何点を目指すか、はっきり言われる。それが単位につながる。
気になって全国の高専を調べてみたら、これは我が家だけの話ではありませんでした。
1. 高専の77%が、TOEICを単位認定に使っている
TOEICを運営するIIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)が、全国の大学・短大・高専を調べた公式調査があります。その結果が、はっきりしていました。
高専の77%は、大学の43%のおよそ1.8倍。 学校の種類の中で、高専がいちばんTOEICを制度に組み込んでいます。
理由を考えると、腑に落ちます。高専は5年間で技術者を育てて、そのまま社会に出す学校です。「実務で使える英語」を測るTOEICと、目的が一致しているのだと思います。
2. 実際に、どの高専が、何点で単位をくれるのか
同じ調査には、高専の名前と基準スコアが実名で載っています。いくつか抜き出してみます。
| 高専 | 対象 | 基準スコアと単位 |
|---|---|---|
| 石川高専 | 全学科 | 400点→1単位/470→2/600→3/730→4/795→5/860→6 |
| 岐阜高専 | 全学科1〜5年 | 400→2単位/470→3/600→4/730→5/860→8 |
| 豊田高専 | 全学科1〜5年 | 400→1単位/450→2/500→3/570→4/650→5/730→6 |
| 鈴鹿高専 | 全学科1〜5年 | 470→1単位/600→2/730→3/790→4/860→5 |
| 和歌山高専 | 全学科1〜5年 | 470→2単位/730→4/860→8 |
| 大分高専 | 全学科1〜5年 | 450→1単位/550→2/700→4/800→6 |
| 熊本高専 | 4年/5年 | 4年で500→2単位/5年で600→2単位 |
| 群馬高専 | 3年・専攻科1年 | 400→1単位/…/550→3/650→4/…/950→8 |
| 有明高専 | 全学年(1〜5年) | 350→1単位/450→2/550→3 |
| 新居浜高専 | 全学年 | 400→1単位/500→2/700→4/850→6 |
(出典:IIBC「TOEIC Program 単位認定における活用状況 −大学・短期大学・高等専門学校−」/2021年度調査。最新の扱いは各高専の公式サイトで必ずご確認ください)
ここから見えてくることが、3つあります。
① 「1〜5年生」が対象の高専が多い
岐阜・豊田・鈴鹿・和歌山・大分などは、入学した1年生から対象です。「編入や就職が近づいてから」ではなく、入った年から始まっている。
② 学年が上がると、基準も上がる
熊本高専は、4年生で500点、5年生で600点と、学年ごとに求められる点が上がります。段階的に引き上げる設計です。
③ 単位より重い使われ方をしている高専もある
- 石川高専:専攻科で、TOEICをJABEE認定教育プログラムの修了要件にしています。単位のおまけではなく、修了の条件です
- 津山高専:総合理工学科3〜4年で、成績評価にIPテストの結果を10%加えて評価すると明記されています
3. 何点を目指せばいいのか
目標スコアは、目的によって変わります。調べた範囲で、目安を並べます。
就職を考えるなら
IIBCの企業向け調査では、企業が新入社員に期待するTOEICスコアの平均は550点でした(IIBC「英語活用実態調査」)。中途採用ではさらに高い水準が挙がっています。
高専生は求人倍率がとても高い一方で、行きたい会社を選べるかどうかは別の話です。英語のスコアは、5年間の成績とちがって「あとから足せる持ち点」でもあります。
大学編入を考えるなら
編入では、当日の英語筆記の代わりにTOEICスコアを提出する大学が主流です。北海道大・東北大・名古屋大・大阪大・筑波大・神戸大などがこの方式。北海道大は「TOEIC600点を100点満点の80点に換算」と、換算の目安まで公表しています。
▶ 志望校ごとの英語の扱いは、高専から大学編入できる15大学の比較記事にまとめました。
単位認定を考えるなら
上の表を見ると、600点前後が「まとまった単位がつく」ラインで、多くの高専に共通しています。まず600点、というのは現実的な最初の目標だと思います。
4. 高専生の平均は349点。だから600点には意味がある
ここで、少し意外なデータを紹介します。
高専生の平均は349点で、実は高校生より低い——この数字だけ見ると不安になります。でも、読み方には注意が必要です。
IPテストは、学校で全員が受けるものです。 一方、公開テストは「受けたい人」が自分で申し込んで受けます。そもそも母集団が違うので、「高専生の英語力が低い」と読むのは正しくありません。
そして同じ調査で、もうひとつ興味深い動きがありました。
この動きを知っておくと、「1〜2年生のうちに触れておく」ことの意味が分かります。3〜4年は忙しい。5年からでは、編入のスコア提出期限に間に合わないこともある。
そして裏返せば——平均349点の中で600点を取れれば、それは学校の中でかなり上位だということです。目指す価値のある数字だと思います。
5. 見落としやすい落とし穴:学校のIPテストが使えないことがある
これは、調べていていちばん「知らなかった」と思ったことです。
高専で全員が受けるのは、多くの場合IPテスト(学校が日時と場所を決めて団体で受けるもの)です。ところが、大学編入では「公開テストのスコアのみ有効」としている大学があります。
| 大学 | 明記されている条件 |
|---|---|
| 神戸大学 | TOEIC L&Rのスコア提出。IP・国外受験・S&Wは不可。2025年4月以降の公開テスト分のみ有効 |
| 東京科学大学 | 2027年度から筆記廃止→スコア提出へ。IP・ITPなど団体受験は不可=個人で公開テストを |
さらに、スコアには有効期限があります。神戸大は「2025年4月以降」、東京科学大は「2025年4月1日以降の受験分」、筑波大は「令和6年6月以降」。受けたいと思ってすぐ受けられる試験でもありません(申込から受験、スコア到着まで日数がかかります)。
6. じゃあ、何から始めるか
英語が得意ではない子ほど、単語で止まっていることが多いそうです。TOEICは出る単語がかなり決まっているので、ここは近道が使えます。
そのうえで、一度は本番と同じ形式で解いておく。TOEICには公開されている過去問がありません。その代わりになるのが、試験を作っているETS自身が本番と同じ手順で作った公式問題集です。
7. まとめ
「理系だから英語はほどほどでいい」——受験のときの私の思い込みでした。実際は逆で、高専のほうが英語を制度に組み込んでいた。知らないまま5年生になると、選べる進路が減ってしまうかもしれません。
うちの娘も、これから本格的に向き合うことになります。実際に受けてみて分かったことは、そのときにまた追記します。